セミの抜け殻の思い出・・・
暦では処暑が過ぎましたが、世間は、なかなか涼しくはなってくれません。
暑いさなか、わが家の玄関先のシュロの植木をなんとはなしに見つめていますと、
なにかいるではないですか。
そこには、セミの抜け殻がしっかりと細い幹を掴まえていました。すこし驚きです。
この話には、ここへたどり着くまでに家内とのストーリーがありました。
ちょっとプレイバックしますと、朝、「植木に抜け殻がついているので、捕って、
どこかへ持って行っといて~」、と家内はセミの抜け殻と知っていたんですが、
これを聞き、見に行く私には、こんなところにセミの抜け殻があることが、驚きでした。
そして、見つけるや、抜け殻をそっと親指と人差し指ではさんで、引っぱろうとしますが、
まるで生きているかのように、シュロの幹を掴まえていて離れようとはしません。
何回か引っぱりましたがやはりダメでした。
まるで、この幹から絶対離れるものか、と強い意志があるように思えて、とうとう私は諦めて、
家内のとの約束を実行できませんでした。
いづれはどこかに消えていくのでしょうが、むしろここにずっとおればいいのでは、と思い、
せっかく長年かかって土のなかから這い上がってきたせつない命なんだから、と思った瞬間、
そ~っとしてやることにしました。家内も「そうですね」、と撤去のことを諦めました。
それから時々、その様子を見ていますが、しっかりと幹を掴まえたままです。
いまでは、暑い夏の思い出となりました。
だんだんとセミの鳴き声が聞こえなくなってくると、夏が終わりに近づいてきたんだなぁ、と
思う一方で、だんだんと朝夕の凌ぎやすさが増してくると、秋の虫が鳴き始めてきます。
セミは、幼虫で7年間土の中にいて、羽化してから2週間ほどの寿命だと聞いています。
限られた時間の中、生物は命の限り歌い続けます。
「一枚目」をズームアウトした写真です。どこに抜け殻が
あるのかお分かりになりますでしょうか。
陶器製の白いものは傘立てです。
考えてみれば、このセミは、このような、わざわざ人が出入りする
玄関先を選び、飛び立っていったものだなぁ、と思いました…….
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投稿:2010.8.25
8 Comments
ん~~~
じっくり文章を読みはまってしまいました。
何かその向こうに,たとえられているものがあるような
精一杯生きたいものですね!
ほんと。
それにしても暑いですが(笑)
こんばんわ
強い生命力を感じます。
玄関先だからしっかりとしがみつき
早朝に殻から出たのでしょうか?
私の家にもセミの鳴き声が聞こえてきています。
夏の初めを教えてくると共に
秋の初めを伝えて去ってしまう短い命ですね。
心に響く文章が写真とあいまって
すごく切ない感じになりました
こんばんは、JOKERさん、
セミの命ははかなく、それゆえに
美しいんでしょうね。
もう少し暑そうですね。でも堤防にあがると
ススキの穂が風に揺れていて、秋はそこまで
きていますよ。
takaeさん、こんばんは、
玄関先の植木に、抜け殻を発見したのには
驚きましたね。えぇ、こんなところに…..
人知れず抜け出して、飛び立ち、仲間と一緒になって
大合唱していたんでしょうね。
こんばんは、フィリオネルさん、
ありがとうございました。
羽化して1~2週間の命ゆえ、
美しいのかも知れませんね。切なくなります。
儚い命を精いっぱい生きたセミは、抜けがらを残して
何処で息絶えたのでしょう。
取ろうと思えば取れない抜け殻でもないでしょうが
そっとそのままにしてあげたお二方の優しさが
この胸に響きます。
あざみさん、こんにちは、
コメントありがとうございます。
死して抜け殻を残したわけですが、
ず~っと幹にあり、なんとも言えません。