暦では処暑が過ぎましたが、世間は、なかなか涼しくはなってくれません。

暑いさなか、わが家の玄関先のシュロの植木をなんとはなしに見つめていますと、

なにかいるではないですか。

そこには、セミの抜け殻がしっかりと細い幹を掴まえていました。すこし驚きです。

この話には、ここへたどり着くまでに家内とのストーリーがありました。

ちょっとプレイバックしますと、朝、「植木に抜け殻がついているので、捕って、

どこかへ持って行っといて~」、と家内はセミの抜け殻と知っていたんですが、

これを聞き、見に行く私には、こんなところにセミの抜け殻があることが、驚きでした。

そして、見つけるや、抜け殻をそっと親指と人差し指ではさんで、引っぱろうとしますが、

まるで生きているかのように、シュロの幹を掴まえていて離れようとはしません。

何回か引っぱりましたがやはりダメでした。

まるで、この幹から絶対離れるものか、と強い意志があるように思えて、とうとう私は諦めて、

家内のとの約束を実行できませんでした。

いづれはどこかに消えていくのでしょうが、むしろここにずっとおればいいのでは、と思い、

せっかく長年かかって土のなかから這い上がってきたせつない命なんだから、と思った瞬間、

そ~っとしてやることにしました。家内も「そうですね」、と撤去のことを諦めました。

それから時々、その様子を見ていますが、しっかりと幹を掴まえたままです。

いまでは、暑い夏の思い出となりました。

セミの抜け殻 The cast-off shell of the cicada

だんだんとセミの鳴き声が聞こえなくなってくると、夏が終わりに近づいてきたんだなぁ、と

思う一方で、だんだんと朝夕の凌ぎやすさが増してくると、秋の虫が鳴き始めてきます。

セミは、幼虫で7年間土の中にいて、羽化してから2週間ほどの寿命だと聞いています。

限られた時間の中、生物は命の限り歌い続けます。

シュロと傘立て A hemp palm and an umbrella stand

「一枚目」をズームアウトした写真です。どこに抜け殻が

あるのかお分かりになりますでしょうか。

陶器製の白いものは傘立てです。

考えてみれば、このセミは、このような、わざわざ人が出入りする

玄関先を選び、飛び立っていったものだなぁ、と思いました…….

投稿:2010.8.25